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お客さんってどんな人たちなの?俺らは会わないからわからんのよ

 

 

 

 

僕は2014年4月に都内の家具メーカーに新卒で入社した。

2ヶ月が経った頃、お客さんに「どんな人が作っているんですか?」と聞かれた。

職人さんを推している家具屋で働いているのに僕はその人たちの顔も名前も知らなくて、答えられない自分が情けなくなった。

その会社の家具が好きで入社したけど、好きが浅い。

にわかファンだなと思った。

 

 

同年夏に、地方にある自社工場で家具作りの研修があった。

自分たちが売ってる家具がつくられている生産ラインに立って、職人さんと一緒に家具をつくるという企画だ。

 

木とオイルの匂いがぷんぷん香る作業場には、木を裁断する人がいたり、研磨する人がいたり、オイルを塗布する人がいたりと、真剣な顔つきで作業する職人さんが十数人いる。

いろいろ聞きたいけど、集中力がすごくて話しかけれる雰囲気ではない。

工場に入る前は「何でも聞いてください!」って言ってくれたけど、無理だ。

 

職人さんたちの雰囲気にビビりながらも、2泊3日の研修期間に多くのことを学ばせてもらった。

「あのテーブルの脚はあーやってつくられてるんだ」とか、「タイル張りのテーブルの下地はこうなってたんだ」とか、いろんな発見があった。

僕がいるお店の家具はこんなに丁寧に作られているのかと、感動しまくりだった。

 

 

やっぱり一番良かったのは、職人さんと会って話せたこと。

1年でも長く使って欲しいと真心を込めて材木の状態を丁寧にチェックしていることを教えてもらったり、「この木の良さはスベスベな手触りとあたたかみだからさ」と目の前の僕に言いながら、素人では全く気付かないレベルのちょっとしたざらつきを1つ1つ丁寧に磨いている様子を見せてくれた。

 

 

 

この研修中は聞いてばかりいて質問されることは全然なかったが、最終日に工場の中で一番無口でいかつい職人さんから、ある質問をされた。

「お客さんってどんな人たちなの?俺らは会わないからわからんのよ」

 

当たり前だが、お店で働く僕は家具を買ってくれる人のことを知っている。

目の前にいるのだから。

 

だけどここ(工場)にいる人たちは、自分たちが丹精込めて作っている家具がどんな人たちの手に渡っているのか知らない。

分かってはいたけど、質問されて改めて「そうだよな、知らないんだよな」と実感したし、なんだか悲しくなった。

 

お客さんはどんな職人さんが家具を作ってるのか知らないし、職人さんはどんなお客さんが家具を使ってくれてるのか知らない。

どちらも知ってるのは僕ら販売員だけなんだよな、と思った。

 

 

 

研修を終えて、お店での勤務が始まった。

工場に行く前の僕は家具を商品として売っていて、機能性とか風合いとか使いやすさとか、ありきたりなセールストークをしていた。

「職人さんが丁寧に作ってます」としか言えなかった。

だから売りにくかったし、売れなかった。

 

職人さんと家具を作った僕は、お客さんに職人さんを伝えた。

伝わったお客さんは家具をたくさん買ってくれて、ファンになってくれた。

モノを売るってそういうことなのかもしれない、と気付かせてくれた。

 

 

 

オンラインストア「HitoMoji MARKET」は、お客さんと職人さんに聞かれた質問がずっと心の中にモヤモヤ残ってて、そのモヤモヤをどうにかしたくてやりたくなった事でもある。

HitoMoji ONLINEの取材で出会った人や、インスタグラムやミンネを見ていて素敵だと思った人に声をかけ、HitoMoji MARKETに出品してもらっている。

僕がHitoMoji MARKETをやっているのは、作り手と使い手がつながって欲しいから。

どっちも知らないなんて悲しすぎる。

 

手に取ってくれる人たちには、クリエイターさんの人柄や、作品に対する想いが伝わってくれれば嬉しい。

その上で作品を大切に受け取って欲しい。

 

 

そして、HitoMoji MARKETで作品を購入した人はぜひ、クリエイターさんにメッセージを送ってみて欲しい。

「届きました」とか「ありがとう」とかそんな一言でも構わない。

取材で明らかになったことなのだが、「どうやったらもっと喜んでもらえるかな」と考え試行錯誤し、納得いかなければ振り出しに戻すこともあるそうだ。

中途半端な状態で出品しているクリエイターさんは1人もいない。

一生懸命作ってくれたその作品に対して何かしらのリアクションを見たり聞いたりできたなら、クリエイターさんの創作意欲はより一層高まるはずだ。

僕の勝手な想いを隣にくっつけてしまってはいるが、作り手と使い手がつながってくれたら嬉しい。

 

 

 

 

 

【この記事を書いた人】

名前|黒田 晃平(クロダ コウヘイ)
ニックネーム|クロ
誕生日|10月17日生まれ、天秤座
出身地|静岡県静岡市
職業(職種)|フリーランス(ウェブマーケター、インテリアコーディネーター)
趣味|旅、行ったことがないインテリアショップ・雑貨屋を巡る、サウナ(特にサウナしきじ)、キャンプ、グルメ巡りなど

ホームページ|joint2017.com
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